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2010-06-24

ゲーム業界にもフリーソフトウェアの風が吹く?!MMORPG RyzomがAGPLv3でソースコードを公開。アートワークはCC-BY-SAで。

なんと、本格的な3D MMORPGであるRyzomソースコードが公開されるというニュースが流れたのは先月のことである。ニュースから少し時間が経ってしまったが、今日は皆さんにフリー(自由な)ソフトウェア版Ryzomについて紹介したい。

Ryzomとは

2004年に発売されたMMORPGであり、開発元はフランスのNervrax社である。日本語版はないので日本ではあまり聞かない名前であり、筆者もこのニュースを聞くまでは知らなかった。というわけで、筆者もよく知らないので詳しくはWikipediaの記事(英語)を参照して欲しい。

Linuxでも動く!

古来より、UNIX系OS上で遊べるフリーなRPGと言えばRogueやNethackと相場が決まっていた。筆者自身は(文字で表現された世界にはなじめなかったので)あまりそれらのゲームはやらず、プレイしている人を横目で見つつグラフィカルなPCゲームに熱中していたものである。DOSやWindows上で。かつて、Loki Softwareという会社が果敢にもWindows上で動くゲームをLinuxへ移植するというビジネスに挑んだが、あまり売れずに廃業してしまった。PCでグラフィックを駆使したゲームをするならWindows。そんな風潮は今でも変わらない。

しかし、Ryzomは違う。OSS版のホームページによると、本格的な3Dグラフィックを駆使したゲームでありながら、WindowsだけでなくLinuxやMac OS Xにも対応している!!まさかLinux上でこんなゲームが遊べる時代が来るとは思っていなかった。しかもフリー(自由な)ソフトウェアとして。もちろんPS3などで動く最新のゲームと比べると見劣りしてしまうが、フリー(自由)な本格的3D MMORPGの登場は画期的である。

ライセンスはAGPLv3/CC-BY-SA

Ryzomは最強のコピーレフトを持つフリーソフトウェアライセンス、AGPLv3をチョイスしている。AGPLv3は何度かこのブログでも取り上げているが、サーバープログラムに適用された場合、接続する相手に対してソースコードを公開する義務があるライセンスである。クライアントにAGPLv3が適用されてもナンセンス(≒GPLv3と変わらない)であるが、Ryzomではサーバーとクライアントの両方にAGPLv3が適用されている。このため、第三者がRyzomを改造して独自のゲームサービスを展開、またはゲームクライアントを配布する場合は、必ずソースコードを公開する必要がある。(AGPLv3ライセンスで。)

グラフィックを駆使したゲームは、ソフトウェア単体で動作するものではない。必ず膨大なグラフィックデータが必要である。Ryzomのグラフィックデータは、全てクリエイティブコモンズライセンス(CC-BY-SA)で公開されている。そのため、Ryzomで利用するだけでなく、他の目的で使用するのもOKだ。別のゲームに流用したって構わない。ただし、CC-BY-SAに従う必要はある。つまり、BY(原著作者のクレジット表示)とSA(改変・利用して再配布場合にはライセンスを同じものにする)という制約がある。だが、それさえ満たせば如何様にも利用していいのである。商用サービスでも!

ソフトウェアの入手とセットアップ

詳細は全てOSS版のホームページに書いてあるのでそちらを参照して欲しい。以下はUbuntu上でのビルド手順の概要である。

1. Mercurialの入手
sudo apt-get install mercurial

2. ソースコードの入手
hg clone http://ryzom.hg.sourceforge.net:8000/hgroot/ryzom/ryzom

3. 必要な開発ツールおよびライブラリの準備
sudo apt-get install libxml2-dev g++ libtool automake autoconf libpng12-dev libjpeg62-dev\
 rrdtool libmysqlclient15-dev flex liblua5.1-0-dev libexpat1-dev libcurl4-openssl-dev\
libluabind-dev libfreetype6-dev libx11-dev libgl1-mesa-dev libxxf86vm-dev libopenal-dev\
 libalut-dev libogg-dev libvorbis-dev libxml2-dev cmake build-essential libpng12-dev\
 libjpeg62-dev rrdtool libmysqlclient15-dev bison

4. libwww-devのインストール(Ubuntu 10.04にはパッケージがない)
Karmicのリポジトリから以下のパッケージをインストール。
http://packages.ubuntu.com/karmic/libwww-ssl0
http://packages.ubuntu.com/karmic/libwww0

5. サーバーのビルド
export RYZOM_PATH="/home/user/ryzom/code/ryzom" 
$RYZOM_PATH/tools/scripts/linux/buildmode static
$RYZOM_PATH/tools/scripts/linux/make_all
しばし待つ。

6. クライアントのビルド
export RYHOME="/path/to/ryzom/code"
mkdir $RYHOME/nel/build && cd $RYHOME/nel/build
cmake -DWITH_TESTS:BOOL=OFF ..
make -j3
cpack -G DEB -D CPACK_PACKAGE_CONTACT="your@mail.address"
sudo dpkg -i nel-0.7.0.deb
mkdir $RYHOME/nelns/build && cd $RYHOME/nelns/build
cmake ..
make -j3
cpack -G DEB -D CPACK_PACKAGE_CONTACT="your@mail.address"
sudo dpkg -i nelns-0.7.0.deb
mkdir $RYHOME/ryzom/build && cd $RYHOME/ryzom/build
cmake .. -DWITH_SERVER:BOOL=OFF -DWITH_TOOLS:BOOL=OFF
make -j3

7. Windows版クライアントのダウンロードと展開
http://sourceforge.net/projects/ryzom/files/ryzom_client_open.7z/downloadからバイナリをダウンロードして適当なディレクトリに展開。そして以下のように先ほどビルドしたバイナリに対するシンボリックリンクを作成。
ln -s /path/to/code/ryzom/build/bin/client /path/to/windows/client/dir/ryzom_core_linux
※ゲームデータは全てバイナリに含まれているため。

あとはおもむろにryzom_core_linuxを起動すればOKである。

スクリーンショット紹介

起動直後の画面。サーバーへのログインを促される。OSS版では、デフォルトでOpenShardというサーバーへ接続されるそうだ。ユーザーとパスワードはアカウントが存在していない場合、適当に3回入力すると自動的に作成されるそうだ。詳しくはこちらのページを参照のこと。

ログインするとキャラクタ選択画面になる。以下は既にひとり作成済みであるが、アカウント作成直後にはキャラクタは存在しない。左側の空きスロットを選択すると、キャラクターメイキング画面に移行する。

Ryzomのキャラクターメイキング画面で面白いのは、顔を自由に変えられるところ。鼻の高さ、大きさ、目と目の間隔、口の位置などをスライダーで調節することができる。

ついつい遊んでしまう。髪型やタトゥーにもいろいろバリエーションがあるので、顔を決めるだけでも結構楽しい。ただし、どの顔にしても洋ゲーっぽいのは致し方ないところ。

キャラクターメイキングが完了したらプレイだ。画面が暗い!のは夜だから。WoWほどでないにしろ、結構ちゃんとしたプレイ画面である。いきなりこの画面だけ見せられて「フリー(自由な)ソフトウェアです」と言われて信じられるだろうか?

戦闘。魔法を打ってる。

空を見上げてみた。何か道みたいなのがある。その上には木も生えているようだ。

おわりに

OSS版Ryzomはまだ公開されたばかりで、ファンが色々弄り倒して楽しくなってくるのはこれからだろう。AGPLv3/CC-BY-SAに従っていれば、利用、改造、配布、サーバーの運用は自由である。「独自のRPGを作ってみんなにプレイしてもらいたい!」と思う人は、Ryzomを改造してサーバーを公開すると楽しいんじゃないだろうか。ライセンスがAGPLv3/CC-BY-SAなので、人が作成・改造したものをバンバン再利用することになるだろう。そしてそれがまた再利用される。人がたくさん集まれば、そんな風にしてみんなで世界を育てていく醍醐味が味わえるゲームになるかも知れない。残念ながら、現時点ではWorld EditorはまだLinuxに対応していないようなので、マップの作成にはWindowsが必要だろう。興味がある人はぜひRyzomをダウンロードして、いじり倒して見て欲しい。

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