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2014-01-29

2014年で気になる7つのトピック

1月が終わろうとしているのに今年初めてのエントリになる。今年初めてのエントリは、やはりこの1年で予定されている、IT業界にとってインパクトが大きいであろうできごとについて語ってみたいと思う。

1. XPの終焉

今年最も大きいインパクトがあるイベントと言えば、やはりWindows XPのサポート終了ではないだろうか。毎度おなじみNet Applicationsによると、Windows XPのシェアは28.09%となり、Windows 7に次ぐシェアとなっている。(2014年1月現在)



シェアの3割を占めるOSが突然利用不可能になってしまうのだから、このインパクトは目を見張るものがあるだろう。おそらくはより新しいWindowsへの移行が最も多いのだろうが、他の種類のOSへの移行も皆無ではないだろう。多くの人はWindowsに次いでシェアの高いOSXを選択するだろうが、ベンダーロックインを嫌う人々や、財政の厳しい自治体等はLinux Desktopへの移行をするかも知れない。

いずれにせよ、移行は大きなコストを伴うし、作業自体もスムーズに完了するとは思えない。今年はかなりの混乱があるだろう。XPのサポート終了日は4月9日である。

2. KDE5/Wayland

筆者はここのところKDEがお気に入りのデスクトップ環境であり、もはや手放せないほど気に入っている。KDEはWindowsのスタートメニューライクなランチャーを備えたUIを持っており、それでいてOSXのSpaces&Exposeのような3D効果も持っている。両方をいいとこ取りしたような出来栄えであると言えよう。

そのKDEのメジャーバージョンアップが控えているのである。現在の最新バージョンはKDE4であり、そこそこ安定している。だが、もちろんまだ解決すべき課題があり、KDE5でいくつかの問題が解消されようとしている。

その中で最大のポイントは、Waylandへの対応だろう。WaylandはX11を置き換えるものだ。

X11は素晴らしいソフトウェアであり、これまでUNIX系OSのUIを支えてきた。だが、そのAPIは大昔に設計されたものであり、限界が来ているとの批判もある。よりシンプルなAPI、あるいはアーキテクチャへと変更することで、品質や性能の向上が期待される。実際、QPainterという2Dのコンポジターのデモを見る限り、2Dであるにも関わらず極めてスムーズに動作しているのが見て取れる。



Waylandに次いでインパクトが大きいのはQt 5への対応だろう。

また、KDE5では、kdelibsというライブラリのモジュール化も行われる。現在のバージョンは大きなモノリシックの構造になっているのだが、モジュール化をおこなうことで、各機能を必要とするアプリケーションが特定のライブラリだけにリンクすれば良いことになり、KDEの機能を利用したアプリケーションの開発が容易になる。

3. モバイルOS、第三勢力

このところ、モバイルOSはiOSとAndroidの一騎打ちが続いているが、筆者にとってそれらのOSはもはやワクワク感は皆無である。スマートフォンは消費するものと成り果ててしまっており、目新しさなどはなく、端末を選ぶ基準はコストパフォーマンスぐらいしかないというのが現状である。筆者はAndroidユーザーであるが、新しいAndroid端末を見ても心が踊らない。まだ昔のぎこちない感じの頃(2.x)のほうがずっと弄ってて楽しかった。

というわけでそろそろ新しいモバイルが流行って欲しいところである。そして、まだ芽の出ていない新しいOSの開発が、実は盛んに行われている。筆者が個人的に注目しているのは次のOSである。(リストアップしているのはオープンソース系のものばかりであるが、これは筆者の趣味である。)

  • Sailfish OS
  • Firefox OS
  • Ubuntu Touch

中でもSailfish OSは特に応援したい代物だ。Sailfish OSは、NokiaがMeeGoの開発を中止したあと元社員によって開発が行われている、MeeGoの後継となるOSである。TizenもMeeGoのエッセンスを取り込んだと言われているが、大人の事情によってだろうか、全くの別物に変わり果てている。かつてMeeGo端末の登場を心待ちにしていた筆者にとって、その期待はSailfish OSへ引き継がれた形となった。ぜひ素晴らしい端末を世に送り出して欲しいと思う。

ところで、Tizenはどうもうまく行っていないようだ。先日、予定していたTizenの端末の発表が延期されたそうだ。Tizenがあまり期待できない分、MeeGoのDNAを絶やさないためになおさらSailfishOSには頑張ってもらいたい。

もちろん、他のOSについても頑張って欲しいと思う。プレイヤーが多ければ多いほど面白いからだ。

ところで、オープンソース系のモバイルOSとしてはもうひとつ、Open webOSというものがあるが、こちらは流石にもう芽は出ないのではないかと思っていた。ところが、最近webOSの資産を買収したLGが、自社のスマートTVにwebOSを搭載するというニュースがあり、モバイルとは別の方向でwebOSは進化していく芽が出てきたことが伺える。Open webOSの行く末がさらに気になるところである。

テレビと言えばFirefoxOSも忘れてはいけない。こちらはPanasonicと手を結んだそうだ。使いやすいUIを作るコストを下げるために、モバイルOSを利用するというのはなかなか悪い選択ではないと思う。

4. SteamOS

あのゲームで有名なValveが、Linuxディストリビューションを出すというのだから時代も変わったということを実感せざるを得ない。

SteamOSは、DebianベースのLinuxディストリビューションであり、ValveのゲームプラットフォームであるSteamを搭載しているのが特徴だ。Steamは6500万人ものユーザーを抱えており、これまでにリリースされたゲームは3000を超える。現状、Linux用のゲームは非常に少ないのだが、SteamOSがリリースされ、なおかつ専用ハードウェアであるSteam Machineが販売されるようになると、Linuxへの移植が一気に進むのではないかと期待される。

それらのゲームは当然プロプライエタリなのだが、リチャード・ストールマンも言っているように、結果としてLinuxユーザーが増えるのならそれでいいじゃないかと筆者も思う。

また、個人的にはゲームは自由でなくても別に構わないとも考えている。ゲームは娯楽なので生活にも仕事にも関係ないからというのもあるし、ネットワークを経由して対戦するようなゲームの場合には、プレイヤーが勝手にクライアントを改造できてしまうのはゲームの公平性を破壊することになるからだ。対戦ゲームは条件を揃えた上でテクニックを競ってこそフェアプレーができるというものだ。互いに対等な条件で戦うには、ルールが強制される必要がある。そういった意味では、自由な改造はゲームには向かないという考え方もある。(もちろん自由に改造することを前提とした上で、ゲームを大勢で楽しむというのもアリだろう。そういった楽しみ方は否定しない。)プロプライエタリであっても技術的にはリバースエンジニアリングをして、ゲームプログラムを改造してしまうことも可能だが、ライセンス的に禁止すれば抑止力になる。

SteamOSは確かにプロプライエタリの文化がLinuxに持ち込まれるというイメージばかりが先行するが、そうばかりとは限らないようだ。先日、ValveがVOGL OpenGLデバッガがオープンソースとして公開するというサプライズがあった。ライセンスはまだ未定のようだが、願わくばGPLであることを望む。また、nVidiaもAMDもSteamOSをサポートするために、Linux用ドライバの改良に対して前向きになるという点もLinuxユーザーにとってはメリットがあるだろう。nVidiaはNouveauに対してドキュメント等の支援をするようだし、自由あるいはオープンソースのドライバにも好影響があるのではないだろうか。

また、SteamOS、Steam Machineが普及すれば、ゲームのLinuxへの移植は一気に加速することになるかも知れない。それにより、Linuxユーザーが増えるかも知れない。もしLinuxに人気タイトルが移植されたとしても、良い子のLinuxユーザー諸氏はくれぐれもゲームのやり過ぎに注意しよう。

5. 超小型コンピュータの発展

ここ最近では小型、あるいは超小型コンピュータが大変人気を博しているが、今年はさらにそれが加速するのではないだろうか。とりわけRasberryPiが人気であるが、このセグメントの製品が多数投入され、趣味な人による活用だけでなく実用においても事例が増えるのではないかと思う。かくいう筆者も昨年Beagle Bone Blackを購入してウハウハした経験から楽しさを理解しているので、需要はそれなりにあるように思う。

さらに、今月初めにはIntel Edisonが発表された。なんとSDカードサイズの規格である。マシンパワーも相応に小粒ながら、この小ささは群を抜いており、様々な応用が期待できる。このサイズならウェアラブルでも活躍できそうだ。

6. 消費増税

これはコンピュータそのものの話題ではないが、日本のIT業界にかなりのインパクトがあると思われる。消費税率変更に対する作業はもちろんのこと、景気が下向いてしまうことからIT業界における構造的な変化もあるだろう。会社の淘汰も進むのではないだろうか。はっきり言って憂鬱だ。景気が冷え込めばトータルの税収も減るし、消費増税で良いことなど一つもない。

7. ソフトウェアの自由

多くの人がPCではなくタブレット等のデバイスを使うようになり、ソフトウェアの自由はますます脅かされることになるだろう。ソフトウェアの開発をしない一般人にとって、ソフトウェアの自由というものは縁のない話である。残念ながら、大多数の人たちはソフトウェアの自由を気に留めてもいないし、PCが衰退すればさらに自由がないがしろにされることになるだろう。従来型のアプリケーションは減少の一途をたどってウェブアプリケーションが主流になっているし、ウェブ自体もどんどん自由なものではなくなっていくだろう。

そして、巨大企業はソフトウェアの自由を叩き潰すためにご執心である。もしそういった企業の製品ばかりを皆が使うようになれば、その結果、データは巨大企業によって盗聴され、行動は制限され、都合の良いように操られるようになってしまうのである。

自由というものは、それが無くなってから後悔しても遅い。そういった悲劇的な未来を避けるには、絶やさず自由を大切にし、守り続けなければならない。そんなわけで、今年も引き続きソフトウェアの自由について多くの人に訴えて行きたいと思う。

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